悪魔の証明、感染していないことを証明することはできない。新型コロナ対策に「国内パスポート」案のバカさ加減

新型コロナについて、都道府県をまたぐ移動に「国内パスポート」という通行手形を導入してはどうかと、お偉い先生が提案をしたらしい。そもそも感染していないことを証明することはできないということは高校レベルの知識でも理解できるはずなのに、お偉い先生方はそんな仕組みをどのように運用するつもりなのだろう。

そういう方々の知能がそこまで低いとは思えないので、凡人には思いつかないような理屈があってのご提案なのか、はたまた新しい利権を作りたい勢力や検査ビジネスを広げたい既存勢力などからの力でも働いているのだろうか、とうがった見方さえしたくなる。

悪魔の証明

「無い」ということを証明することはかなり難しい。その困難さから「悪魔の証明」と言われている。「感染していない」ということを証明することも同じだ。

たとえばPCR検査の場合、次のようなかなり条件の良い仮定をおいて考えてみよう。

  • 偽陰性が出る確率:20%
  • 偽陽性が出る確率:0%

つまり、感染していれば80%の確率で陽性となり、感染していなければ100%陰性という結果がでる場合だ。

この仮定では、陽性判定が出た場合には「確実に陽性であると証明」されるので、新型コロナに対する治療行為を行うことができる。

一方で、陰性であることの証明はかなり難しい。

コロナに感染している人に対して検査をした場合、1回目の検査で陰性がでる可能性が20%もある。体質や環境などの要因で偽陰性が出やすい人もいるので全体の確率を連乗するのは少々乱暴なやり方だが、20%の確率の検査を2日連続で行えば4%、3回行えば0.8%、4回行えば0.16%だ。

つまり1万人の「感染者」に、陽性判定が出るまで1日1回の検査を行った場合、偽陰性は以下のようになる。

  • 1日目:2千人
  • 2日目:400人
  • 3日目:80人
  • 4日目:16人

仮にある時点の国内感染率が5%だとすると、20万人のうち1万人が感染者になる。つまり、無作為に20万人に対して一回だけ検査をした場合は、2千人の感染者が偽陰性として判定されることになりそうだ。100人に1人の割合だ。

つまり「陰性」の判定結果は、「感染していない可能性が高い」というだけで、「感染していないことの証明」とはならない。「国内パスポート」は「たぶん感染していない証明」という程度のものにしかならない。

検査の後に感染する可能性もある

仮に偽陰性の出る確率が0%の検査手法が開発された場合でも、「国内パスポート」が気休め程度のものでしかない状況は変わらない。

感染者を100%捕まえることのできる検査手法が開発されたとしても、その検査結果は検体を採取したその瞬間の状態を証明しているだけにすぎない。

報道によれば、この新型コロナは目立った症状が出る前から他人に感染させる能力があるらしい。

検体採取の待合室で感染するかもしれない。帰りに乗った電車の中で感染するかもしれない。遊びに行った先で感染するかもしれない。

つまり、感染後の潜伏期間なども考慮すれば、国内パスポート発行から最長でも1週間程度しか「他人に伝染さない」ことを証明できないのだ。

「ガン検診で何も見つからなくても次の日にガンになるかもしれない。年一回の検診じゃ不十分だよね。」と友人の医師が言っていたのを思い出す。

抗体検査について

一方で、抗体検査についてはかなり期待できそうだが、抗体がどの程度の期間有効であるのかまだ不明だ。

また、二回発症した例が報告されていたり、ウィルスが変異しかなりの数の亜種が生まれていることなどを考えると、現時点では「抗体を持っていること」を国内パスポートの発行要件とすることは難しそうだ。

マスコミによる間違った検査誘導

そもそも、検査は「どのような治療を行うべきか決めるために行う」という文脈の中で行われるべきで、専門家会議にしてもテレビに出ているお医者さんなどについても、そこは間違えてはいないと思う。

このコロナ禍が始まった当初から「PCR検査の数が足りない」という報道が多くなされたのも、「有症状や濃厚接触者でコロナ感染が強く疑われているにもかかわらず、検査を受けられない」という趣旨のはずである。

ところが、前段部分が削られ「検査を受けられない」という部分のみが強調されて報道されていた為、あたかも「望んだ人がすべて検査を受けられるべき」だというように多くの人が誤解していたはずだ。今でもそのような誤解が解けていない人もいるだろう。

どのような理由なのかはわからないが、日本には検査を大量に行いたい勢力が発生したようで、通信事業だとかEC事業の大手がその尻馬に乗ろうとした。

そして、またこのタイミングで「国内パスポート」なる名目で大量検査を行うような仕組みを提案してくる専門家が出てきたりする。

「陰性の結果には気休め程度の意味しか無い」ということと、「陽性判定が出たからコロナに的を絞った治療ができるという検査の本来の目的」を知っていれば、やみくもに検査を行うことがいかに無駄であるかということは容易に納得できるはずだ。

それなのに、大量検査を行いたがっている今現在のワイドショーなどの報道姿勢や、「国内パスポート」案が出てくるというのは、相場とか何かで得をしたい勢力がいるんじゃないかと思えてしょうがない。

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